A.子どもを支える黒子である。
金も出すし、食事も出す。
生活環境も整えるし、イベントも忘れない。
バカみたいなPTAや、意味不明のただ働きに全力で取り組む。
そして何かあれば徹底的に子どもを守る。
ざっと。
これで「親だから当たり前でしょ。」とか言われたらどうよ。子ども諸君。
まあ、親だからできるんだけどね。
4人も男女を育て、ガラケー時代からスマホ時代の親付き合いも経験している。
20年間子どもが切れず、孫も生まれ、またリスタート。
離婚、シングル、再婚、介護に起業。
まだまだ人生修行中だが、何かを相談されればそこそこ具体的にアドバイスできる程度には、スキルアップしている。
本日は休日恒例、次男と2人で探検隊へ行ってきた。
行ったことのない公園へ行くだけの話なんだが。
余談だが、一度目の緊急事態宣言の頃の公園は、遊具もまとめられビニールシートがかかっていた。しかし二度目の今はどこもオープンで利用者も多い。
これは子供たちのフラストレーションに配慮したのだろうか?
一度目なんか、運動部の小学生が3人で河川敷をランニングしていただけで通報され、その上市内学校の緊急メールで一斉配信されていたが・・。
例に漏れず我が家もコロナ禍で精神を破壊された2人を抱えた経験があるので、(コロナと我が家と - ただの主婦)今回ばかりは世論が何と言っても行きますよ。公園!(と、道の駅)
しかしながら遊具はまあまあの人だかりだったので、とある隣接施設の屋上にある人工庭園へ行ってみた。
25mプールほどの広さの芝生広場と、植え込みとベンチが数台あるだけの広場だった。
お子さん連れが一組と、女子高生しかいなかったので、芝生でゴロゴロ遊ばせていたら話しかけられた。
いつも公園へ行くと、不愉快になる親子連れと3回に1回くらいは遭遇し、毎回旦那にキレている。
例えば滑り台の割り込みをしたり、押したりを頻繁にする子がいたとして。
どう見ても幼児なのに親がいない。
周りを見渡すとスマホをやりながらベンチに座る大人が一人。
これか?と思い、チラ見する。
何度目かに「犯行とチラ見とベンチの大人のリアクション」がシンクロし、「やはりこいつか」と、わかる瞬間が来る。
わかったからにはじっと見る。我が子に注意しながらじっと見る。
犯行。
「危ないから押さないでね~」と、声大きめに注意。再びチラ見。
一瞬目が合うも、すかさずスマホに目を落とした!
てめぇこの野郎・・・
せいぜいこの程度の事件だが、誰しもイラっとする「公園あるある」だと思う。
しかも帰り際にスマホ画面が見えたりして、それがポケモンgoとかパズドラだと、LINEより腹立たしい。
また「おいくつですかぁ?」と、コミュニケーションを取ってくる人も嫌いじゃないけど身構えてしまう。
私はちょっと浮世離れしていて依存症気味なので、夢中で話始めると何でもかんでも自分を理解してもらいたい衝動が抑えられず、1~100まで説明してしまうからだ。
恐らく私とサシで1時間話し合えば、生い立ちから世帯年収まで吐露してしまうだろう。
しかしごくたまに切れ良く流せたり、絶妙な合いの手や、始終褒めてくるタイプの人物と出会う。
後者は気を付けろ、とよく聞くし、実際過去にもろくなやつがいなかったけど、このタイプって聞き上手で相手を引き出す力に長けている。
私は人の話を聞かないし、他人を褒められないので心底凄いと思う。
そしてこの度話しかけてきた方は苦手な後者だったわけだが、途中で形勢逆転をしたため、私よりも向こうが食いついてきた。
その方はアラフィフくらいで次男と同じ年頃の男の子と遊んでいた。
始終子どもに気を使っていて「○○君、こうよ?」「○○君、いーい?」と、接し方が丁寧で他人行儀だった。
過去一度、平日の午前中、公園で黒人と白人の男女がおソロのポロシャツを着て、そこそこ成長した中国人の男の子と3人で遊んでいたのを見かけた。
帰宅後「あれは金の匂いがする」と、旦那にいじわるそうに語ったことがあった。
恐らく、専属の保育士だろう。
これもそのたぐいかなとも思ったが、今日は祝日。
もしかしたら近所にある施設の子かな?と、思ったら前者だった。
祝日にこの制度を利用してまで働くとは、頑張る親なんだな、と思った。
案の定「おいくつですか?」から始まる。美容院で言う「これからお出かけですか?」みたいな。
幸い同じ学年だったので、すぐに子どもも打ち解け遊び始めた。
最初はどうでもよい会話だったのだが、先生の性分というのか、ベテラン子育てラーの血が騒いだのか、先輩面して子育てを語ってきた。
うんうん。一期一会だから聞くけどさ。
解脱した私にとって、他人の子育て論はエピローグだ。
「そうですねー。」と、適当に相槌を打っているだけの状態になり始めたとき、その空気を察したのか「お子さんしっかりしていますねー。」と、褒め攻撃にシフトチェンジしてきた。
私もその誉め言葉を2、3発受けたところで「まあ姉がいるので」と、ポロリ。
1つ個人情報をこぼしてしまった。はめられた。
ものの5分で私から個人情報を吐かせるほど、拷問が上手い。というか私がちょろい。
くそぅ。私はこの2人の関係が「先生と園児」までしか知らない・・。
「女の子がいるといいですねー。一緒におままごとして遊んでくれたり言葉使いも優しくなるし。」
おっと。次男の年齢から、姉=小学生くらいだと推察してきた。
いや現実、同居中の姉は次女だけで、次女は卒業式前のギリJK。
長女は次男が生まれたころには家を出ていて、血縁以外接点もない。
そしてJKは自分のことで精いっぱい。言葉遣いに関しては目も当てられない!
ってところまで全て説明したい衝動に駆られてしまった。
違うんです・・もう話しかけないでください。しゃべっちゃうから。
「2人も育てて偉いわーうちも2人必死で育てて・・」
と、どうしようもない会話が続きそうだったので「・・4人目なんです・・」と、再びポロリしてしまった。
「え・・・」時が止まった。
ここで親あるある。
年ではない。子どもの数、年齢で決まる上下関係。
しかし相手も「4人お子さんがいるんですねー日本に貢献していて偉い!」
攻撃がやまない。
これは全て小学生くらいな口調である。違う。小学生はうちにはいない。
「うちも2人ですがバタバタでした。毎日大変よねー偉いわー。」まだいうか。何基準の偉いだ。
このまま泳がせていてもよいが、子ども達はとんでもなく相性が良く、平面だけで延々遊べてしまっている。
これは楽だ。遊ばせたい!そして帰って寝てほしい!
この欲望に駆られ、ついに私は出し惜しんでいた切り札を切ってしまった。
「上の子はもう大きいので・・」ままよ!話よ長引け!
「じゃあお母さんのお手伝いとか・・」と、続けてきそうな先生だったが、勘が鋭かった。「・・上の子・・おいくつ?」と、ATフィールド全開でド直球投げてきた。
「もう家を出て結婚してます。」
「・・・!」形勢逆転だ。
保育園の先生という経験値が消え去る瞬間である。
戦いはラスボスと、スライムから最終形態のラスボスへと変化した私との再戦へと縺れ込む。
子育てのアドバイスは最早いらない。そう、私は解脱している!転スラなのだよ!
日本中探しても少数派であろう私の正体をよくぞ引き出した!うははははははー!
「では・・」と、勝ち逃げ(?)したかったが、この形勢逆転後、なぜか私が先生のお子さんたちの悩みや、先生自身が受けた保護者同士のもめごとを30分くらい相談される羽目になった。
しかも急に敬語になった。
くそぅ。先生の皮を脱ぎおった。
昔なら「わかるー。私もこういうことされてさー。」と、すぐ同調し、いかに自分が不幸なのかを競うような展開になりがちだった。年寄りの大病自慢のように。
でもどうせ一期一会だしいいやと思って、嫌いな奴の実名あげて「標的は誰にでも回りますよ。それでみんな均衡を保っているんですから。」と、わりと考えて答えた。
ら、思った以上に悩んでいたらしく、「そうー?そうですよね・・でも・・ううん、そうだったのかな・・」と、クライアントそっちのけで意識が当時にタイムスリップしてしまった。
「でも、そういう嫌な経験があると人間力が上がりますよ。」と、独特に励ました。
ら、「そう?本当にそう思います?上がった感じします?」
重いわ。追い込まないでくれ。
まあそんな感じで1時間くらい立ち話をしながら子ども達を見ていた。
2人とも初対面の上、何にもない芝生広場で1時間は遊びつづけ、「帰るよー」と言ったらヤダって返された。子どもって凄いなーと思った。
私だったら着いた瞬間、踵を返して家に帰る。
帰りは案の定寝てくれて助かったが、そのかわりさっきの出来事が走馬灯のようにグルグルしてしまい、ある過去を思い出した。
以前、長女と次女が幼稚園の時に年齢がかぶった姉妹がいた。
2人とも地の顔が笑顔のようで、いつもニコニコしていて礼儀正しく頭が良かった。
お母さんは元幼稚園の先生だった。
みんなそれを知ってか知らずか、経験者づらが気に入らないのか、保護者からは距離を置かれるタイプだった。
私は他人がどう言おうと「私が嫌いなら嫌い。」というスタンスなので、普通に接したが、他人からの愚痴もよく聞いた。
でもそのお母さんは私より年齢が10歳くらい上だったためか、普通に話していても確かにアドバイスが多いな。とかは、思っていた。
そんな時「元先生って聞くと子育てのエキスパートみたいに思うでしょ?」と、話しかけて来たことがあった。
「うん。」正直そう思った。私は現在進行形で宇宙人を2人も抱えていたため、そうとしか思わなかった。
きっとなんでも予測して、最善の対処ができるんだろうなぁって。備えもできそうだし。
「でもね。集団と自分の子じゃ全然違うのよ。よく言うの。先生程、自分の子育てが下手だって。」寂しそうに笑っていた。
この言葉と語ったときの声と顔は、15年経った今でも忘れない。というか、一生脳裏に刻まれた。
彼女はこれから3年後、自宅のお風呂場で亡くなった。
酒飲んで転んで・・そのまま事故死だったそうだが、発見したのは下の子だった。
次女と同級生の下の子は、当時小学3年生。母を発見した次の日には、平然と学校へ登校した。
先生たちは面食らい、「大丈夫?まだ来なくていいのよ?」と、言ったそうだが、
「あ、大丈夫です。」と、笑顔で答え、それからも学校には休まず来ていた。
・・あれから大人はみんな黙った。
「先生」って酷だと思った。
清廉潔白、全知全能でミスをも(失言も)許されないイメージがあり、何か周りから見張られ続け、私生活は隠して先生という威厳を持ち、相手と日々接する。(例外はいる)
だから保護者側で出会っても鉄のような人間だと思われがち。
実際、議論もうまく説得力もあり流れを持っていかれる。
物怖じなく前に出て話せる。PTAも事実上一人でこなせ、応用スキルもある。
まるで覆面リサーチが、素人の保護者に紛れて侵入しているようで、担任も若干ビビりがち。
・・元先生はカミングアウトしてはいけない・・。
でも、私が言うが「先生は人だ」きっと傷ついて悩んでいたのかもしれない。
今日話しかけられた先生との会話で、何かが分かった気がしたのだった。
今まで誰かに言うのも憚れるプライドというか、近所で広まったら崩れてしまいそうな自分の存在価値とか、オンとオフの狭間で誰にも弱みを見せられず、問題は全て抱え込んでいたのかもしれない。
それを、何の接点もなく、予期せず先輩に転生した私に、この先生は思わずぶつけてしまったのかもしれない。
・・重いとか思ってすいませんでした。
・・でも、今じゃなかったの・・。
親だって先生と同じだよ。
そう伝えたい。
・・特にそれが1mmも伝わらない次女に・・・。