今こそ一日に2回も3回も車を出してブンブン出かけてしまう私だが、結婚した当初は学生だったので徒歩か自転車ばかりだった。
子どもが生まれ、ベビーカーを押すようになると全部徒歩。
自転車すら乗らなくなって、二人目も三人目も今のようなベビーカーに付けるステップが無かったので、昔は珍しい三輪ベビーカーの鼻先に丸まって座ってもらっての移動だった。
二駅くらい先なら歩いていたので、長いと一時間近く歩いていた。
子ども乗せ用自転車を買ったのはもっと後で、初めて乗せたときの楽さに驚いた。
さて、この徒歩移動で大変なのはお買い物である。
子ども達を乗せて、駅前まで歩いて40分くらい。
週3くらいで買い出しへ行っていたのだが、ベビーカーの下のかごからはみ出さんばかりの大量な食料と、更に手持ちにかけられる食料。
子ども2人を乗せて40㎏あるんじゃないかという、積載量限界を超えたベビーカーを押して、一人歩いて帰路につくわけだ。40分かけて‥。
そして、ルーティーンが崩せない性分の私は同じ道を来て帰る。
毎回同じ。時間帯も同じ。
町中を歩いていると、毎年同じ場所にツバメの巣ができていることに気が付いた。
今でさえ、駅前はツバメだらけでこの時期あの独特な鳴き声が駅前には広がる。
居酒屋の照明付近、ケーキ屋さんの軒下、雑居ビルの隙間など、様々なところに毎年巣がある。
都会の駅前一等地に家を構えるセレブツバメは、物怖じもせずに人通りが多いところでも平気で巣をつくる。
カラスも鳩も雀も駅前に巣を持ってるのを見たことないが、ツバメは上流階級なのだろうか。
でも自分でも思うが、ツバメが巣をつくる場所は水害に強く子育てに適した安全な場所と聞く。
なおかつ、幸せを運ぶとか言われたら巣ができたところで撤去しづらい。
・・カラスや鳩は即撤去できるが。
そうやって許容され続けて安心したのかな。と、思う。
何はともあれ、燕尾服で都会に家を構え飛び回るなんて、鳥類の貴族だ。
でも、20年前は珍しくさらにド都会のド真ん中出身の私は初めて見る光景だった。
親ツバメがヒュンッと現れた瞬間、6羽くらいの赤い口が一斉に叫んで開く。
餌が終わるとシュンと黙って巣に埋もれる。
おとなしく次を待ってる感じ。スゲー密だろうに騒がない。
面白いなー可愛いなーと、それからは子ども達と毎年見ていた。
そして娘たちが小学校に入ったころに長男も生まれ、わざわざ3人連れて5年ぶりくらいにその場所を訪れたことがあった。
何だかこの兄弟たちにこの場所を覚えてほしかった。
公園で遊んでいた姉妹に「秘密の場所に行こう!」と、連れ出したら、一緒に遊んでいた同級生も何人か着いてきた。
「いるかな・・」「さすがにいないかな・・」ドキドキしてその場所に近寄ると、聞こえたのだ。あの独特な鳴き声。
その場所の床もフンまみれ!
「いるぞーー!」
3人でのぞき込むと、やっぱり7羽くらいのひなが真っ赤な口を開けて餌をもらっていたのだ。
なんか涙が出てきた。
でも、一緒に着いてきた友達は「なんだー帰ろー」と、帰ってしまった。
帰れ帰れ。
寸分違わずに同じ場所に戻るツバメは凄い。
ご帰還の時期も同じとして、日時も同じなんだろうか・・・鳥肌が立ってくる。
「帰巣本能」という言葉を後に知って納得したのだが、この戻ってくるツバメは一体どのツバメだ・・という謎が生まれた。
何年かは同じ親ツバメらしいのだが、毎年7羽くらい雛が生まれたとして3年来るとする。
累計21羽のひなのうち、どいつが親の意思を引き継いで同じ場所に巣を作り、継承していくのだろう・・・。
・・たまにバッティングしないのだろうか・・。
また、同じ場所に兄弟の家ができてしまったりしないのだろうか・・。
そしてその孫たちはいずこへ。
果てしない倍バインで増えていくツバメたち・・のどいつが同じ場所に巣をつくる権利があるんだろう・・。
もう寝られない・・・。
あれから20年程経ち、あのツバメたちはまだ同じ場所に巣を作っていた。